英語上級者でも、これまでに洋書を読んだことがなく、読めるようになりたいと思っている人は多いでしょう。
あるいは、すでに洋書を読んだことがあっても、漫然と読むのではなく、もう一歩深い読み方をして読書の質を高めたいと考えている人もいるはずです。
本特集では、英語上級者が洋書を選ぶうえで押さえておきたいポイントと、英語上級者におすすめの洋書をご紹介。さらに、英語上級者が洋書を読む際のコツについてもわかりやすく解説します。
英語上級者におすすめの洋書を知りたい人はもちろん、高い英語スキルを活かし、洋書を通して英語の世界をより楽しみたいと考えている英語上級者は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
英語上級者の洋書の選び方
まず、英語上級者が洋書を選ぶ際に押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
英語上級者の洋書の選び方 ポイント1: 英単語の難易度ではなく、表現の質にこだわる
英語上級者だからといって、必ずしも英単語の難易度が高い洋書を選ぶ必要はありません。英単語のレベルにこだわるよりも、英文の表現の質にこだわり、洋書を選ぶのがおすすめです。
英語上級者が、洋書でより質の高い読書体験をするためのコツは、本に書かれている英文や内容をより深く、正確に読み取ることです。そのためには、洋書ならではのレトリックや表現手法が丁寧に組まれ、テーマや主張を効果的に表現している良書にあたることが大切。ことば(英語)の難しい洋書を読み切るよりも、より学びの多い読書体験ができるはずです。
英語上級者の洋書の選び方 ポイント2: お気に入りの作家を見つける
これまでに洋書を何冊か読んだことがあり、そのなかに気に入った本がある場合、同じ作家の別の作品を読んでみるのもおすすめです。
すでに読んだことがある作家の作品あれば英語の難易度もある程度わかるので、英語レベルの点から洋書を読むのを躊躇する必要がなくなります。
また、同じ作家の洋書を数冊読むことで、その作家の考え方をより深く理解できるようになるでしょう。同じ作家の洋書を読み、その人の書き方に慣れると、伏線や比喩表現など一冊目では素通りしていたことにも気づけるようになります。
ちなみに、好きな作家に出会えれば読書は一層楽しくなります。せひ、「新刊が待ち遠しい」と思える、お気に入りの作家を見つけてみてください。
英語上級者の洋書の選び方 ポイント3: 英語の種類に注目する
「英語の種類」と聞いてまず思い浮かぶのは、「アメリカ英語」と「イギリス英語」ではないでしょうか。ただ、一口に「アメリカ英語」といっても地域や年代などによって使われることばは異なり、「イギリス英語」は上流階級、中産階級、労働者階級など、階級によって使用される英語が随分と違ってきます。また、カナダやオーストラリア、その他の地域の英語もそれぞれに特徴があります。
地域、時代、年齢などによって英語表現が異なるので、「どのような種類の英語を読みたいか」という観点で洋書を選ぶのもひとつの方法です。
【英語上級者向け】おすすめの洋書5選
本チャプターでは、英語上級者の方におすすめの洋書を5冊ご紹介します。
★ 選書のポイント
今回、洋書の内容からテイストの異なるものを5冊、英語上級者向けに選びました。
読み物としての面白さはもちろん、表現技法がユニークなものや、優れた英語表現が使用されている良書を選んでいます。また、いずれも文学界で高く評価されている小説ですが、堅苦しさやとっつきにくさはなく、普通の読書感覚で楽しめるものばかりです。
気になる作品がありましたら、この機会にぜひ手に取ってみてください。
≪ 英語上級者におすすめの洋書 その1 ≫
日の名残り Amazonでチェック
原題 | The Remains of the Day |
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ジャンル | 政治小説 |
著者 | カズオ・イシグロ |
ページ数 | 258ページ |
おすすめポイント |
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洋書の紹介
2017年にノーベル文学賞を受賞した日系イギリス人作家、カズオ・イシグロの代表作。
舞台は第二次世界大戦後のイギリス。老執事のスティーブンスが、ナチスドイツの強大化を招いた対独宥和主義者のひとり、ダーリントン卿に仕えていた大戦前の日々を回想します。
歴史の転換期における大英帝国の主要人物で、世界の行く末を左右していたダーリントン卿。彼を陰で支えてきた執事として、偉大な主人に貢献できた人生がいかに素晴らしいものだったかを強調するスティーブンスの語りから、読者は徐々に、スティーブンスの悔いの深さに気付きます。
本作は、「信用できない語り手」による一人称語りという手法を採ることで、「取り返せない後悔を抱えながら、人は残りの人生をどう生きるか」というテーマをみごとに描いてみせた一作。
物語の筋だけでなく、その表現手法にも注目してもらいたい英語上級者におすすめの洋書です。
≪ 英語上級者におすすめの洋書 その2 ≫
わたしを離さないで Amazonでチェック
原題 | Never Let Me Go |
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ジャンル | SF小説 |
著者 | カズオ・イシグロ |
ページ数 | 282ページ |
おすすめポイント |
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洋書の紹介
『日の名残り』と同じカズオ・イシグロの作品でありながら、クローン人間が主人公という、まったく性質を異にする物語。
介護人として働くキャシーが少女時代を回想する形式で、物語が進むにつれ、施設での奇妙なエピソードの数々から、彼女たちが臓器提供を目的として造られたクローン人間であることが明らかになってきます。
SF作品はちょっと・・・という方もご安心を。ジャンルや設定ではなく、人物の置かれた状況や彼らの人生との向き合い方から、「逃れられない宿命を背負いながら人はどう生きるか」に着目することで、作品を楽しめます。
クローンの子どもたちへの「教育方針」をめぐる、大人たちの思惑や葛藤も興味深く、心に突き刺さる一冊になるはずです。
≪ 英語上級者におすすめの洋書 その3 ≫
ミッドナイト・ライブラリー Amazonでチェック
原題 | The Midnight Library |
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ジャンル | ヒューマンドラマ |
著者 | マット・ヘイグ |
ページ数 | 304ページ |
おすすめポイント |
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洋書の紹介
仕事も愛猫も失い、婚約者とも破談し、人生の何もかもが上手くいかなくなった30代半ばの女性ノラは、自ら命を断つ決意をします。しかし目覚めると、そこは不思議な図書館。それは「生と死の間にある図書館」で、あたりにある無数の本は彼女が「選ばなかった人生」でした。
多くの後悔を抱えるノラは、「水泳選手になった人生」「研究者になった人生」などを生きてみるものの、期待に反して絶望からはなかなか逃れられません。ノラが最終的にたどり着いた答えとは……?
イギリスで出版された後、43ヵ国で翻訳され、世界中で大人気になった本作。全英一位も獲得しました。
「あのときこうしていれば」「人生をやり直せたら」と感じている方に特におすすめしたい一冊です。
≪ 英語上級者におすすめの洋書 その4 ≫
We Are All Completely Beside Ourselves (日本語版なし) Amazonでチェック
原題 | We Are All Completely Beside Ourselves |
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ジャンル | ヒューマンドラマ |
著者 | カレン・ジョイ・ファウラー |
ページ数 | 336ページ |
おすすめポイント |
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洋書の紹介
2013年に出版されたアメリカの小説。主人公のRosemaryは5歳のときに双子の姉妹であるFernを失い、さらにその7年後、兄も消えてしまいます。ネタバレになるため詳しく書けませんが、姉妹のFernはどこかユニークで、物語の重要な要素となっています。
本作は時系列が行ったり来たりするのが特徴。ストーリー全体の中盤あたりから物語が始まり、「それ以降の話」と「それ以前の話」が同時並行的に進んでいく独特な形式となっています。そして、この変わった方法が、実はテーマに即した巧みな手法であることに読み進めるうちに気づくはずです。
本作は、記憶、人間と動物との関係、人間であることの定義などについて深く考えさせられる作品。特徴的な時系列や使われている単語の難しさなどから、簡単に読める本ではありませんが、やや難易度の高い洋書にチャレンジしたい英語上級者におすすめの一冊といえるでしょう。
≪ 英語上級者におすすめの洋書 その5 ≫
ライ麦畑でつかまえて Amazonでチェック
原題 | The Catcher in the Rye |
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ジャンル | 青春小説 |
著者 | J.D.サリンジャー |
ページ数 | 240ページ |
おすすめポイント |
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洋書の紹介
アメリカ人作家、J.D.サリンジャーの著書。1951年に出版された小説で、当時のアメリカの若者から熱狂的に支持されました。
主人公は、高校を中退した思春期真っ只中の16歳の少年 ホールデン。世間や大人のご都合主義を「phony」(インチキ)として嫌い、思春期特有の苛立ちや反発を野卑な言葉遣いで放ちます。
ですが注意深く読むと、欺瞞的な大人を憎みながらも、ホールデン自身は上流家庭にあり、彼が嫌う大人からの恩恵を大いに受けていることに気付くでしょう。あらゆる描写の細部に技巧が凝らされた作品なので、そうした部分に注目して読んでみるのもおすすめです。
『ライ麦畑でつかまえて』は、乱暴で稚拙な口語体と精緻な表現技法が共存する、唯一無二の古典的名作。
英語上級者が洋書を読む際のコツ
英語上級者が洋書を読む際には、上級レベルの英語で書かれた洋書を読もうとするよりも、英語上級者ならではの深い読み取り方を意識するのがおすすめ。漫然と洋書を読んだり、難解な英文を解読しようとしたりするのではなく、読解に意識的になることで、洋書から得られるものが多くなるからです。
そこで本チャプターでは、英語上級者が洋書を使って質の高い読書をするために意識すべきポイントをご紹介します。
英語上級者が洋書を読む際のコツ その1: 文体、作者の意図、テーマをくみ取る
作家は、たとえば畳みかけるように短文を重ねることで緊迫感を出したり、軽快なトーンでユーモラスな雰囲気を出したりと、文体にさまざまな工夫を凝らします。洋書を読む際も、そうしたトーンを感じ取れるように文体を意識するのがおすすめ。
ちなみに洋書の場合、重要なキーワードは形容詞にあることが多いです。そのため、洋書を読む際は、どのような形容詞が使われているかに着目し、文章の空気感や作者の意図、テーマなどを読み取ることを心掛けてみてください。
形容詞がわかると、洋書の読解力がぐんと上がるので、日ごろから形容詞の語彙を増やしておくのも良いでしょう。
英語上級者が洋書を読む際のコツ その2: 文法・語法を意識する
洋書を読む際に文法や語法を意識することで、ことばのニュアンスが分かってきます。冠詞、可算名詞・不可算名詞の使い分け、助動詞、前置詞、仮定法など基本的だと思われる文法ほど立ち止まり、なぜこの表現をしているのかを考えてみましょう。これができると、一段レベルの上がった読書になります。
たとえば、下記の2文は似ていますが、意味合いはかなり異なります。
”If you go, I will give you everything you need.”
”If you will go, I will give you everything you need.”
前者は、単に「もしあなたが行くことになれば、必要なものはすべて渡しますよ」という意味。
後者の方は、たとえば、誰も行きたがらない危険な場所に行ってほしいと懇願する場面で、「もしあなたが行くと決意してくれるなら、必要なものは何でも差し上げます」というような、「あなた」の意志の有無が重要なキーとなるニュアンスになります。
条件節中にwillが含まれる仮定法は学校の授業であまり取り扱いませんが、これが分かるのと分からないのとでは読み方がずいぶん違ってきます。
まとめ
本特集では英語上級者に向けて、洋書の選び方のポイントやおすすめの洋書、そして洋書を読む際のコツをご紹介しました。
洋書を選ぶ際は、英語の難易度の高さにこだわるのではなく、表現技法など内容的な観点から「良書」を選ぶのがおすすめです。
そして、いざ洋書を読む際は、英語上級者ならではの英語スキルを駆使して、作者の意図や文体、テーマをしっかりと捉え、質の高い読書を心がけましょう。
本特集を参考にさまざまな洋書にチャレンジし、人生の糧となるような素晴らしい一冊を見つけてみてください。