筆者にとって「英検1級」は、いつかはチャレンジしたいエベレストのような存在でした。
英検1級はリーディング(語彙・読解)、ライティング(要約・エッセイ)、リスニングと、広範囲の英語力が問われる試験。
勉強しようにも何から手をつけたらよいか分からず、勉強をし始めては、すぐに挫折を繰り返していました。
ですが、現在の職場から英検1級を取得するように指示があり、事態は一変。
本腰を入れて英検1級に取り組むこととなり、2024年の第2回の試験で合格しました。
本特集では、英検1級合格のために重い腰をあげたい人、頑張っているけれどなかなか合格にたどり着かない人のために、筆者の経験も踏まえ、英検1級におすすめの勉強法をご紹介します。
☆なお、本特集では「英検1級一次試験の勉強法!合格者がおすすめの方法を紹介」と題して、英検1級一次試験対策におすすめの勉強法をメインで紹介しています。
英検1級の二次試験対策に関しては、近日公開予定の「英検1級二次試験の勉強法!合格者がおすすめの方法を紹介(仮)」をチェックしてください。
英検1級の基本情報
試験日程 |
年3回
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受験料(税込) ※個人申込の場合 |
12,500円 |
試験時間 |
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レベル | 大学上級程度 |
出題形式 |
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合格率 | 2016年度以降非公開(2015年度の合格率は12%) |
英検(実用英語技能検定)1級を取得するには、「一次試験」と「二次試験」の2つの試験に合格する必要があります。
一次試験は筆記形式で、リーディング(語彙と読解問題)、ライティング(要約および英作文)、リスニングという構成。二次試験は面接形式で行われ、政治・ビジネス・教育・自然・環境などの幅広い分野から出される話題に対して、2分間の英語スピーチと質疑応答を行います。
英検1級一次試験に合格するコツ
英検1級に合格するためには、まず一次試験を突破しなければなりません。
この章では、難関と言われる英検1級の一次試験に合格するコツを厳選してお伝えします!
英検1級一次試験に合格するコツ① 語彙を制するものが一次試験を制す
英検1級の一次試験は、「語彙力を問われる試験」と言っても過言ではありません。
リーディングセクションの語彙問題はもちろんのこと、読解問題やリスニングにおいても、キーワードとなる単語の意味が分からないと文章全体の理解が曖昧となり、回答が難しくなります。
英検1級単語の出題範囲は、約10,000~15,000語。難易度も高いため、英検1級の受験を決めたら、最初に語彙力を強化しましょう。
英検1級一次試験に合格するコツ② 苦手なセクションの点数を底上げする
英検1級一次試験の合格ラインは、7割程度の正解率と言われています。
苦手科目があると、合格ラインに達しにくくなるため、リーディング、ライティング、リスニングのすべてのセクションで、7割以上の正解率を目指しましょう。
英検1級一次試験に合格するコツ③ 「推測力」が意外と大切
英検1級の一次試験を突破するには、単語や読解問題がわからないときのために、「推測力」を身につけることも重要です。
まず単語の場合、prefix(接頭辞)やsuffix(接尾辞)を勉強すると、わからない単語の意味が推測しやすくなります。
また、読解問題が難しい場合は、解答の選択肢を先に読んで、内容の見当をつけましょう。明らかに「文章に書かれていない」選択肢は除き、残った選択肢の「根拠を文章から」探します。
英検1級一次試験に合格するコツ④ 英検1級の一次試験は時間配分が命
英検1級の一次試験は、リスニングの設問を先読みする時間を「5分」取り、100分ではなく、95分(※100分-5分)で各セクションの時間配分を決めましょう。
時間配分を決めたら、普段からその時間配分内で練習をするのがコツです。
英検1級 一次試験対策におすすめの勉強スケジュール作成方法
それでは具体的に、英検1級の一次試験対策は、どのように進めれば良いのでしょうか。
この章では、受験者の事情を考慮した、おすすめの勉強スケジュール作成方法をご提案します。
現時点での自分の英語レベルから、学習期間を考える
英検学習者1,100人を対象に、2020年7月~2020年11月に行った「【英検学習時間目安】英語検定学習者600名を対象に調査」によると、英検準1級の実力がある人が英検1級の合格に必要な勉強時間は450時間です。
つまり、英検準1級レベルの人が英検1級の合格に向けて1日2時間勉強したとすると、「(450時間÷2時間)÷1か月(30日間)=7.5か月」の学習期間が必要となります。
英検1級の合格に向けて勉強スケジュールを作成する際は、どのくらいの学習期間が必要かを事前に把握しておきましょう。
自分の生活リズムを考慮して、学習に充てられる時間を作る
現時点での自分の英語レベルから、英検1級の合格に必要な学習時間がわかったら、次は自分の生活リズムをチェックしましょう。社会人か学生か等によって生活リズムは異なりますし、朝型の人もいれば、夜型の人もいるはずです。
勉強スケジュールを作成する際は、自分の生活リズムを把握し、その生活リズムをベースに、学習に充てられる時間を作りましょう。
自分の性格を考える
英語学習において、意外と盲点となるのが「自分の性格」です。
というのも、自分が毎日コツコツと勉強できる「長距離ランナー」タイプなのか、短期集中型の「短距離ランナー」タイプなのか、それによって「自分に合った」勉強スケジュールが違ってくるからです。
長距離ランナータイプの人は、毎日コンスタントにコツコツ勉強する方が向いているでしょう。
一方、短距離ランナータイプの人は、休日などを利用して一日の学習時間を増やし、短い期間に集中して勉強した方が、学習効果が高いかもしれません。
Memo: 筆者の場合
- 英検1級の語彙問題のみ、以前から勉強していた
- TOEICは950点、コツコツ学習できない短距離ランナータイプ
- 朝型のため、仕事前の朝に集中して勉強
- 週に約16時間×2.5か月勉強し、英検1級の一次試験に合格
英検1級一次試験対策におすすめの勉強法
本章では、筆者が実践した英検1級の一次試験対策におすすめの勉強法をお伝えします。
1.リーディングセクション:語彙問題
筆者は以下のように単語学習を進めていました。
- ①発音記号を見ながら、音源で単語の発音を確認する
- 正しい発音を聴くことはリスニング力にも直結します。単語の発音は必ず確認しましょう。
- ②単語を発音しながら、日本語訳を確認する
- 覚えるというより、サクサクと読むように進めるのがコツです。また、単語のイメージを思い浮かべながら覚えると記憶に定着しやくなります。
- ③単語と併せて例文も確認する
- 自分で1日に何単語学習するのか目標を決め、1日で①~③を進めます。翌日以降は、前日の復習から始め、①~③を繰り返しましょう。音源は通勤や通学の時間に聴くのがおすすめ。
その際、大切なのは、新しい単語が目に触れる機会を増やすこと。「なんとなく」意味が分かっているだけでも、試験の正解率を上げるうえで助けになります。
語彙問題対策におすすめの参考書
英検1級語彙対策の王道と言われる単語帳。豊富な語彙を網羅しているのが特徴。
2.リーディングセクション:読解問題
英検1級一次試験の読解問題は、スピードが命。
ライティングに時間を残すためにも、筆者は以下の方法で読解問題に取り組みました。
- ①タイトルを読む
- まずタイトルでこれから読む文章のポイントを掴みます。
- ②最初のパラグラフ(序論)の1行目と、最後のパラグラフ(結論)の最終行を読む
- 英文は最初と最後に、本文のテーマと結論があります。読解問題に取り組む際は、その部分を先に読み、話の要旨を理解しましよう。
- ③各パラグラフの1行目と最終行を読み、各パラグラフの概要を大まかに予測する
- ④話(文章全体)の概要が掴めたら設問を読み、何に注意して文章を読めば良いのかを頭に入れる。そのうえで、解答の根拠を探すように本文を読み始める
- その際、主語・動詞の塊、接続詞の前後、前置詞/不定詞/分詞・関係代名詞の前など、文の塊ごとにスラッシュを入れながら読む「スラッシュリーディング」がおすすめ。
上記でご紹介した方法は、先に問題文の要旨が掴めるため、いきなり問題文を読むよりも理解しやすい利点があります。
ただ、一筋縄ではいかないのが英検1級の読解問題です。恥ずかしながら筆者は日本語訳を読んでも、内容が理解できないこともありました。
そういった時に、理解を助けてくれるのがコンテクスト(背景)です。そのため、筆者は、ニュースや新聞で、コンテクストとなる知識を増やす努力もしていました。
読解問題対策におすすめの教材
実際に英検で出題された問題に、実践的に取り組めるのが強みの教材。
★ライティング・リスニング対策にも使用できる教材
旺文社のアプリ「学びの友」を使い、アプリで時間管理・解答の提出が可能。正解率の%も確認できる。
★ライティング・リスニング対策にも使用できる教材
アメリカの日刊新聞紙。アプリ(※有料)をスマホにインストールしておけば、どこでも英字新聞を読める。
3.ライティング:要約・英作文
実は筆者が、全く勉強法が分からなかったのがこのライティング。
この章では、そんな筆者でも、ライティングセクションで7割を取得できた勉強法をご紹介します。
要約
要約問題は、以下の3点を押さえて練習をしました。
- ①最初の一文に、「問題文の主旨」を記載する
- 例えば、気候変動への懸念なのか、環境問題対策が不十分であることへの批判なのかを、”This article concerns/criticizes…”というように示します。
- ②各パラグラフのメインポイントを、自分の言葉に言い換える
- 説明なのか、問題提起なのかなど、各パラグラフのメインポイントを「1行」で説明できるよう意識します。その際、具体例(数字や固有名詞など)は削り落とし、重要な箇所だけを凝縮して説明するのがポイントです。
- ③最後に、①の「問題文の主旨」を再度記載する
- 欧米のアカデミックライティングでは、最初と最後に必ず「問題文の主旨」を記載します。最後の一文は、最初と同じ一文でも構いません。大切なのは、「最初」にどのような内容なのかを紹介し、それを「最後」にまとめるというストラクチャー(構成)です。
英作文
英作文も、英検1級の二次試験と同様に、政治・ビジネス・教育・自然・環境などの幅広い分野からトピックが出されます。
トピックでは、自分の意見をサポートするための「3つの理由」が求められますが、この理由を思いつくかどうかが、英作文最大の難関と言えるでしょう。
筆者も最初は、この理由が全く思いつきませんでした。ですが、以下の勉強法を繰り返すうちに、最終的には即座に理由を3つ考えられるようになりました。
- ①YouTubeなどで「英検1級 英作文 理由」で検索し、理由作成のコツをつかむ
- 最初にコツをつかむと、どのようなトピックが出題されても、応用できるようになります。
- ②英作文のトピックに対して1分以内に3つの理由を書き出す練習をする
- ここでは英作文は書かずに、理由のみ3つ挙げます。
- ③理由がどうしても思いつかないときは、ChatGPT(生成AI)に尋ねる
上記の①~③を繰り返し、即座に理由が3つ浮かぶようになったら、「(1)序論→(2)本論→(3)結論」の構成で、実際に英作文を書いていきます。
Point: 「(2)本論」の作成で心がけたこと
- 「序論→本論(Firstly, Secondly, Lastlyで展開)→結論」の型を決める。
- However, On the contrary, Thusなどの接続詞を使う。
- 客観性を持たせるために、主語に“I”を使わない。名詞または“people”, “we”などを主語にする。
★なお、要約文と英作文は書いた後に、英会話の先生、またはChatGPTに添削をしてもらいました。ChatGPTを上手く活用するのもおすすめです。
ライティング対策におすすめのYouTube
【英検1級 ライティング】英検1級の英作文「理由が思いつかない?!」をまるっと解決!
英作文の問題を解く際にポイントとなる「理由」を8つの観点から考える方法を紹介する動画。幅広いトピックに対応できる理由作成のコツが学べる。
4.リスニング
それでは最後に、英検1級 一次試験のリスニングの勉強法をご紹介します。
- ①普段から英語に触れる
- 筆者は朝起きてから寝るまで、時間のあるときは英語のポッドキャストやニュース番組を観るようにしていました。その際、再生スピードを落とし、頭から和訳をして、内容を理解するのがポイントです。
- ②過去問題集や予想問題集で、実践練習をする
-
本番試験で5分間、先読みの時間が取れることを想定し、解答の選択肢を先読みして、パッセージの内容を予測します。
文頭にタイトルなど、掴むべきポイントがくることが多いため、特に文頭を逃さないように気を付けましょう。 - ③理解できなかった原因を分析し、対策を練る
- 音が聞こえなかった場合は、その部分を聞き取れるようになるまで音読をする、文の構成が分からなかった場合は、文法を再確認するなど、原因分析が大切です。
リスニングが聞き取れない原因は様々ですが、「自分が発音できない語彙は聞き取れない」ことが大前提です。音読やシャドーイングは積極的に行いましょう。
リスニング対策におすすめの参考書
『最短合格! 英検1級 リスニング問題 完全制覇』(ジャパンタイムズ)
パート毎に豊富な問題が掲載されており、苦手なパートを効率良く攻略できる。語彙説明と丁寧な解説があるのもポイント。
まとめ
「英検1級一次試験の勉強法!合格者がおすすめの方法を紹介」はいかがでしたか。
英検1級を目指している方のなかには、本記事を読み、「やることが多すぎる!」と感じた方もいるかもしれません。ですが、英検1級の合格に向けて勉強法を決めるうえで大事なことは、「自分の勉強法」を、自分の生活リズムのなかに上手く取り入れることです。
本記事の勉強法が参考になれば、筆者としては嬉しい限りですが、すべて取り入れようとは思わずに、自分にぴんときた「いいとこどり」をしてみてください。
勉強は、自分にあった勉強法を確立するまでが辛いもの。ただ、一旦、英検1級の勉強がルーティン化されてしまえば、自然と勉強できるようになります。
諦めずに、自分のペースで英検1級の合格を目指しましょう!